研究課題/領域番号 |
04258207
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研究種目 |
重点領域研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
辰巳 仁史 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所神経疾患研究部門, 助手 (20171720)
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研究分担者 |
片山 芳文 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所神経疾患研究部門, 教授 (20014144)
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研究期間 (年度) |
1992
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研究課題ステータス |
完了 (1992年度)
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配分額 *注記 |
2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
1992年度: 2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
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キーワード | 神経細胞死 / カルシウムイオン / チャネル / グルタミン酸 / 中枢神経 |
研究概要 |
近年の神経生物学の研究から細胞の死に細胞内カルシウムイオン濃度の変動が関与していることが推測されているが、その機序の解明は始まったばかりである。本研究はパーキンソン病において細胞死の起こる神経核である黒質の神経細胞をラット脳から単離し(あるいは培養の後)、これら単一神経細胞にたいしてホールセルパッチレコーディングを行い、細胞膜カルシウムチャネル電流の分析とカルシウムイオン濃度指示薬fura-2による細胞内カルシウムシオン濃度の光学的測定を行い、細胞内カルシウムイオン濃度の恒常性維持機構を研究した。実験には基底核神経細胞も比較のため用いた。これらの神経細胞では、膜脱分極に伴い膜電位依存性のカルシウムイオンチャネルが開き、細胞外液のカルシウムイオンが細胞内へ流入する。その量を膜電位量として記録測定する事ができ、一回の活動電位あたり約2pC量のカルシウムシオンの細胞内へ流入が起こることが推定された。このカルシウムイオンの流入にともない細胞内カルシウムイオン濃度の上昇が観察された。細胞内カルシウムイオン濃度の上昇は、流入カルシウムイオン量にほぼ比例しているが、流入カルシウムイオン量が大きくなると細胞内カルシウムイオン濃度の上昇が飽和する傾向が観察された。この脱分極刺激停止の後、細胞内カルシウムの濃度は約3から10秒の後に元のレベルに回復した。この回復過程はカルシウムイオンポンプによる汲み取りにより依存していること、またこのポンプの活性化によって細胞内カルシウムイオン濃度が細胞外に較べて極めて低い濃度に保たれていることが推測された。このポンプのカルシウムイオン処理能力は毎秒約10から30pC量であることが計測された。また細胞外液のナトリウムイオン濃度を減少されると、細胞内カルシウムイオン濃度の回復が緩やかになることから、Na-Caイオン交換機構もこの回復過程に関与することが推測された。このように細胞内カルシウム濃度は、流入と汲み取りの間のバランスにより調節されていることが明らかになった。また細胞内カルシウムイオン濃度の上昇がもたらす細胞形態の変化を超ビデオ強化型高倍率微分干渉顕微鏡を用いて観察を行った。グルタメイトレセプターの一つNMDAタイプレセプタを活性化するNMDAを細胞にパイペットから微小投与すると細胞膜から突起状の構造が出現した。またさらに投与時間を長くすると細胞膜上にSwell(スエル)と呼ばれる細胞膜が細胞から避難したように見える構造が出現した。これは細胞損傷の初期過程のモデルとなり、細胞損傷の初期過程の研究にとって重要な研究手法となると考えられる。
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