研究概要 |
神経毒である2-N-methyl-及び2,9-N,N'-dimethyl-β-carboliniunmionとそれらを生成するN-methy-latransferarase活性を、GC/MSおよびHOPLCを用いて人脳皮質・黒質により検出した。脳は、神経疾患を有しない法医剖検体より得た。皮質においては、2-Methyl-norharmaniun ion(2-MeNH)及び2,9-dimethyl-norharmaniumion(2,9-Me_2NH)が1例を除き全ての検体より検出されたが、2-methyl-harmaniumion(2MeHA)と2,9-dimethy-harmani um ion(2,9-Me_2HA)は13例中2例からしか検出しなかった。黒質からも、2-MeNHと2,9-Me_2NHは検出され、皮質のレベルより有意に高い値(平均値でそれぞれ20及び7倍)を示したが、2-MeHAと2,9-Me_2HAは検出限界以下であった。これらの前駆体であるnorharman(NH)とharman(HA)も、両方の部位においてそれらのイオンより高い値で検出された。黒質のNHは皮質のそれよりも平均値で30倍高かった。HAの両部位での差は認められなかった。9-Methyl-NHと2-MeNHを基質として、皮質および黒質において2[β]および9[ indole]位のN-methyation活性を測定した。2[β]-N-Methylation活性は、9[indole]-N-methy-lation活性よりも両部位で高かったが、部位による活性値の差はなかった。近年の研究によりβ-carbolinium ionは、構造的にも作用的にもMPP^+に類似していることが明らかにされている。このように生体内で活性化されたβ-carbolinium ionは、自然発症パーキンソン氏病の発症要因の一つと考えられる。
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