研究概要 |
1.6-OHDA線条体投与後の黒質線条体ドーパミン(DA)神経系の変性に関する形態学的・生化学的研究 我々はすでに、ラシトの線条体に6-OHDA(2dug/ml)を片側投与すると,2〜4週間後には黒質のチロシン水酸化酵素(TH)免疫陽性細胞が投与側で著しく減少することを見出した。本研究ではこの現象が単に一過性のものではなく、黒質線条体DA神経系の変性・細胞死が生じることによるものであることを確認する事実を更にいくつか得ることができた。すなわち,(1)線条体のTH免疫陽性神経終末は投与後10ケ月に至っても著しく減少したままで,再現する傾向は全くないこと,(2)この時の黒質のT博陽性細胞も明らかに減少したままであること,(3)6-OHDA投与1ケ月後に線条体と黒質でDAやその代謝物(HVA,DOPAC)を高速液体クロマトグラフにより分析すると,いずれの部位でも投与側で有意に濃度が減少していることが判った。又,(4)DA受容体刺激薬のアポモルフィンを末梢投与した時みられる6-OHDA投与反対側への回転行動は、左右の黒質線条体系の活動のアンバランスを反映すると考えられるが、これが6-OHDA投与数ケ月にわたって残存することも観察された。2.ビタミンEによる6-OHDA神経毒性の防御の検討 6-OHDA投与によるフリーラジカル発生を防御する目的で,フリーラジカル消去物質であるビタミンEをラっトにあらかじめ摂取させ,その後6-OHDAの線条体投与を行ない,黒質線条体のTH免疫反応性への効果を組織学的に検討した。ビタミンEをゾンデで胃内へ4週間連続与えた場合と,ビタミンE添加食(通常食の20倍のビタミンEを含む)を離乳時より1年間以上食べさせた場合のいずれでも,ビタミンEの防御効果は認められず,6-OHDAによる黒質線条体DA系変性が同程度に生じていることが判った。
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