研究概要 |
葉緑体ゲノムにコードされた未同定遺伝子の一つが葉緑体包膜に発現していることを我々のクループはこれまでの研究で明らかにして来た。この遺伝子をcemAと命名した。本研究では,この遺伝子産物CEMAの機能を明らかにすることを目的としている。 CEMAを融合蛋白質として大腸菌に発現し,この蛋白質を精製後抗原として用い,ポリクロナル抗体を得た。本抗体を用いて,葉緑体への蛋白質輸送がどの程度影響を受けるか調べた。 葉緑体に輸送される代表的な蛋白質であるリブロースニリン酸カルボキシラーゼの小サブユニットpSと,クロロフィル結合蛋白質Cabの2つの蛋白質の輸送を調べた。 antiCEMAIgGはpSの葉緑体への輸送を部分的に阻害したが,Cabの輸送を阻害しなかった。つぎにIgGからFab断片を作成し阻害実験を試みたが,阻害効果がみられなかった。Fab断片にすることで抗体価が底下したためと考えられる。またIgGを使う実験は非特異的反応も起る可能性があるので更に別の抗体を作成し検討する必要が生じた。 CEMAは葉緑体内包膜に局在する蛋白質である。この蛋白質のトポロジーをKKR法で解析して調べ,膜から突出している73アミノ酸残基からなるドメインをみつけた。このドメインの抗体を作成するために本配列をEcdiのMALベクターに組み込み,蛋白質を得た。これを適当な方法で精製し,抗原とし,ポリクロナル抗体を得た。この抗体がどのように輸送に影響するか今後検討する予定である。
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