研究概要 |
エンドセリン(ET)は血管内皮細胞の産生する強力な血管収縮ペプチドである。我々は、ETファミリーの臨床的意義を明らかにする目的で、ヒトの2種類のET受容体(ETーA及びETーB受容体)の遺伝子のクローニングを行い、それぞれの遺伝子の5'隣接領域を含む全構造及び染色体位置を明らかにした。ヒトETーA受容体遺伝子は40kb以上の大きさで8個のExonと7個のIntronから構成され、ETーB受容体遺伝子は24kbの大きさで7個のExonと6個のIntronから構成されていた。両遺伝子とも第1及び第2膜貫通領域のみが同一のExonに、他の膜貫通領域は全て別個のExonにcodeされていた。ETーA受容体遺伝子のIntron2ー7はETーB受容体遺伝子のIntron1ー6と位置及びIntronーphaseが保存されていた事から、この2つの遺伝子は同一の祖先遺伝子から進化したと考えられた。Primer extension,RTーPCR,Nuclease S1 mappingを併用することにより、転写開始点はETーA遺伝子で1ケ所、ETーB遺伝子で2ケ所特定された。どちらの遺伝子にも典型的なTATA boxは存在せず、いずれも転写開始点上流にSPー1結合部位が認められた。また、5'隣接領域には、GATAモチーフ,acute phase regulatory element,E box等のcis等のcisーelementsが認められ、ET受容体遺伝子の転写調節あるいは組織特異思な発現に関与していると考えられた。Humanーrodent somatic hybrid cell DNAを用いたサザンブロット解析により、ETーA受容体遺伝子は第4染色体に、ETーB受容体遺伝子は第13染色体に同定された。本研究の成果により、ET受容体の転写調節あるいは組織特異的発現に関与するcisーelementsの特定が可能となり、転写調節機構の解明の進展が期待される。また。これらの成績は、ET受容体遺伝子変異あるいはET受容体遺伝子の高血圧症等の病因遺伝子としての可能性の検討等のET受容体の病因論的意義の解明につながると考えられる。
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