研究概要 |
本研究は、内皮細胞の代謝と機能を知る目的で細胞外マトリックスを視点として、血管内皮細胞が如何なる細胞外マトリックス(主にコラーゲン)分子を合成し、この分子が如何なる様式で他の細胞外マトリックス分子と作用して高分子会合体を形成し、または内皮細胞と相互作用して生物学的機能を発揮するかを知ることにある。本年度は、細胞外マトリックスのうちで、内皮細胞の合成するコラーゲン分子を同定し、特にこのうちでも短鎖コラーゲンの範疇に入ると思われる新しい内皮コラーゲン鎖構造、それが構成する分子構造、さらにその遺伝子構造と発現様式についての解析を行った。ウシ胎児大動脈由来初代内皮細胞、ウシ頸動脈由来内皮細胞よりmRNAを抽出、cell-translation法よってmRNAの翻訳活性を測定した。翻訳産物を純化した細菌性コラゲナーゼ感受性試験、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気詠動によりコラーゲンポリペプチドを同定すると、180kDaあたりに数本、75kDaあたりに二三本が存在することが判定した。さらにこれらのmRNAを用いてα2(I),α1(III),α2(V),α2(IV),α1(VIII)コラーゲン鎖特異的cDNAでハイプリダイズするmRNAを同定したところ、各々反応を示し、両内皮細胞が、α2(I),α2(V),α2(IV),α2(VIII),α1(XI)コラーゲン鎖特異的mRNAを転写していることがわかった。VIII型コラーゲン分子がウシ大動脈内皮、大脳毛細血管内皮に存在するかを明かにする目的で、ウシ大動脈内皮、大脳毛細血管内皮、ウシ角膜内皮細胞が合成するデスメ膜を材料に生化学的、免疫学的方法で解析した。その結果、ウシ大動脈にはタンパク化学的にVIII型コラーゲンが存在することが明らかになった。現在その分子の鎖構成について検索している。
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