研究概要 |
シスタチン(システインプロテイナーゼインヒビター)は、動物の種種の組織や生産物に存在し、抗ウイルス作用などを有する生体防御物質の1つと考えられている。本班員はアボカドの果肉に新しいシスタチンが存在することを見出した。そこで本研究は、まずアボカドからの本シスタチンの効率的な分離精製法を確立し、ついでその蛋白質化学的諸性質並びに機能を明らかにすることを目的として行った。 本シスタチンの分離精製法を種々検討し、その精製法を確立した。まずアボカドの果肉からpH2で抽出し、トリクロル酢酸処理によりシスタチンを沈殿させた。次にシスタチンを再溶解後、CM-セルロファイン、セファデックスG-50及びDEAE-セルロファインによるクロマトグラフィーを行い、ゲル電気片動的並びに高速ゲル瀘過的に均一な標品にまで精製した。本法は再現性に富み、収量は約1Kgの果肉から約17mgであった。 本シスタチンの分子量は、高速ゲル瀘過法では約13,000Da、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法では約15,000Daであった。本シスタチンの等電点は約5.6であり、pH2〜12及び0〜40℃の領域で安定であった。本シスタチンはトリプシン、α-キモトリプシン、ズブチリシンBPN'、ペプシン、サーモライシンを全く阻害せず、アクチニジン、パパイン、フィシン、ブロメリンなどの植物由来のシステインプロテイナーゼを阻害することが明らかになった。なおアクチニジンに対する阻害形成は非拮抗型であり、阻害定数Kiは0.25μMであった。またアクチニジンと1:1のモル比で複合体を形成することが明らかになった。 本シスタチンは糖を含まない単純蛋白質であり、そのN末端アミノ酸はプロリンであった。またアミノ酸分析の結果、本シスタチンのアミノ酸組成はコメ種子のオリザシスタチンのそれと類似していたが、本シスタチンにはシステインが1残基含まれていることが明らかになった。
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