研究概要 |
1.研究の目的 神経成長円錐は神経細胞の成長期及び神経突起の再生時に,突起の先端に形成される特殊な構造で,運動性に富む特徴を有していると同時に神経細胞における唯一の成長部位でもある。神経成長円錐部にはその活発な運動性を反映して豊富なアクチンフィラメントが特に糸状足部に見出されており,その重合・脱重合変換は精密に制御されていることが予測される。本研究では単離した成長円錐画分を用いて,重合・脱重合の制御に重要な役割を果たしていると思われるアクチン結合蛋白質について解析を行った。 2.研究方法 17日齢ラット胎仔大脳から蔗糖密度勾配遠心法を用いて分離精製した成長円錐画分を,SDS-ポリアクリルアミド電気泳動法により分画した後ビオチン標識アクチンを用いてアクチン結合蛋白質を検出した。 3.結果と検討 成長円錐画分にはこの方法により10種類以上のアクチン結合蛋白質が検出される。それらの中では特にみかけの分子量が約44,000の蛋白質が成長円錐画分に特異的に検出され,中でも細胞骨格及び膜骨格部分に局在することが見出された。この蛋白質はCa^<2+>-及びMg^<2+>-イオン依存性にアクチンに結合し,その結合はATPによって促進される。またこの蛋白質は胎生期の成長円錐画分には豊富に見出されるが,新生児期の成長円錐画分では量が減少し,成熟シナプトソーム画分には検出されない。この蛋白質はまたDNaseIカラムに結合し,EDTAを含む緩衝液で溶出される特性を有している。これらの性質からこの蛋白質はこれ迄知られているアクチン結合蛋白質とは異なる新しいもので,神経細胞の発生初期における突起伸展に重要な役割を果たしていることが推定される。
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