研究概要 |
当該年度予定の抗HIV剤としての機能性アンチセンスDNAの構築を検討したところ、アンチセンスDNAの5'ー末端に脂溶性リピド.1,2ーヘキサデシルグリセロースホスフェートを導入したリピドーDNAオリゴマーの合成に成功した。また、細胞内における分解酵素に抵抗させるためにホスホロチオエート結合をもつDNAオリゴマーの構築も遂行したところ、目的生成物が得られた。 そこで上述で得られたDNAオリゴマーの抗HIV活性を検討したところ、当初、細胞内に最も良く取り込まれると思われたリピドーDNAオリゴマーが、0.02μMと低い濃度では高い活性が見られたが、0.5μM濃度では細胞毒性が現われ、抗HIV活性は完全に示さないことがわかった。すなわち、リピドーDNAオリゴマーは高濃度では細胞膜透過性を向上させることはなく、細胞膜を逆に包み込み、細胞を殺すといったような働きをすることが明らかとなった。 一方、アンチセンスDNAの効力を発揮させる一つに、HIVmRNA上での塩基配列の選択が重要課題となる。そこで、貴伝子発現制御するtat,逆転写酵素産生のpol,増殖調節遺伝子のrev,さらにはtatタンパク質が結合するTARRNAを選び、そのシーケンス依存性を検討した。その結果、revのスプライシングアセプター部位が最も効果的なシーケンスであることがわかった。また、期待したTARRNAへのアンチセンスDNAの効果は低いことから、二重鎖RNAへのDNAの結合は非常に弱いと思われる。これらの結果からシーケンス依存性があることがわかった。以上、我々はアンチセンスDNAが抗HIV剤として利用できる可能性を見い出した。
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