研究概要 |
ラン藻の一種Anabaena variabilis M3株のゲノムDNAライブラリを作製し、ディファレンシアルスクリーニング法によって、低温で発現が誘導される遺伝子を単離する事を試みた。スクリーニングニに用いたプローブは、38℃生育細胞のRNA或いは22℃に温度シフト後2.5時間の細胞のRNAをそれぞれ鋳型として逆転写酵素によって合成した一本鎖cDNAである。λgt10またはλgt11をベクターとした場合には、よいライブラリーができなかった。これはラン藻のDNAがメチル化等の修飾を受けている為である可能性が考えられる。プラスミドベクターを用いた場合にはスクリーニングに耐えるライブラリができた。これまでに5種類の低温誘導性遺伝子クローン(No.21,26,28,29,F2)を得て、その内の2個の塩基配列を決めた。クローン26は2183bpのインサートDNAを含み、これにはRNA結合タンパク質に共通する配列をもつORF1と30Sリボソーム小サブユニットのS21タンパク質と思われるORF2が見いだされた。これら2つのORFは共転写されて0.85kntの転写産物を与えた。クローンF2はλgt10をベクターとして得られたクローンで、1132bpのインサートを含み、クロロフィル合成においてMgをポルフィリン環に挿入するMg-chelataseと相同なORFの大部分(940nt)を含んでいた。現在、他のクローンの塩基配列についても順次調べているところである。またこれらのクローン化された遺伝子の発現の詳細な時間経過についても調べでいる。今後は、これらのORFに対応するタンパク質を大量発現させ、抗体を作って、タンパクレベルでも低温発現を確めていくと共に、タンパク質の機能を確認する。
|