研究概要 |
アイスプラントは500mMNaClを含む水耕液(海水の塩分濃度に匹敵)でも生育可能な耐塩性に優れた植物である。その耐塩性メカニズムの一つとして塩ストレスによって光合成型がC_3型からCAM型へシフトすることがあげられる。本研究ではCAM型光合成における鍵酵素の一つであるNADP-リンゴ酸酵素(NADP-ME)に着目し,塩ストレス下での発現調節機構を明らかにする目的で行った。 「材料及び方法」アイスプラントは水耕栽培し,水耕液のNaCl濃度を400mMに高めることによってCAM型光合成を発現された。抗NADP-ME抗体は,CAM型アスカプラントより精製したNADP-MEを使って作製した。 「結果及び考察」1.塩ストレスによって葉身のNADP-ME活性は約12倍に増加した。2.C_3及びCAM型アイスプラントの葉身よりNADP-MEを抽出し,デイビス法に従って電気泳動したところC_3型とCAM型とでNADP-MEの移動度が異なっていた。3.C_3型のNADP-MEのペプチドマップは一致し,二つのNADP-MEの一次構造は類似していることが分かった。4.しかし,抗NADP-ME抗体を使った免疫沈降反応及びELISAからC_3型とCAM型のNADP-MEで抗原性が異なることが示された。5.NADP-MEcDNA断片をプローブとしたノーザンブロットハイブリダイゼーションでは,塩ストレスによってNADP-MEのmRNAの増加が認められた。6.以上の結果から,アイスプラントのNADP-MEはC_3型とCAM型のものが存在は,塩ストレスによってC_3型のNADP-MEは消失し,CAM型のNADP-MEが発現され,その発現はmRNAのレベルで調節されていることが明らかとなった。
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