研究概要 |
1.ラン藻Synechococcus PCC7942の硝酸輸送体のサブユニット群(NrtA,B,C,D)、硝酸還元酵素(NarB)、および亜硝酸還元酵素(NirA)をコードするnirAオペロンの転写が、硝酸還元の産物であるアンモニアによって抑制され、アンモニア固定の阻害剤の添加によって著しく促進されることを明らかにした。 2.nrtAにプロモーターを欠くネオマイシンリン酸転移酵素遺伝子(細胞にカナマイシンに対する耐性を賦与する遺伝子)を挿入し、この遺伝子の転写がnirAオペロンのプロモーターによって制御される株を作製した。この株を変異誘発剤で処理し、アンモニアの存在下でも強いカナマイシン耐性を示すもの300株を得た。現在、これらの中からnirAオペロンの転写制御系の変異株のスクリーニングを行っている。 3.nirAオペロンの286bp上流にnirAオペロンと反対方向に転写され、nirAオペロンと同様、アンモニアによる転写阻害を受ける2つの遺伝子(ORF1とORF2)を見出し、これらについて以下の諸点を明らかにした。 (1)ORF1のプロモーター領域とnirAオペロンのプロモーター領域には相同の配列があり、これらが転写調節に関与するシス因子である可能性が高い。 (2)ORF1の挿入変異株は、nirAオペロンの転写量および硝酸還元酵素活性が野生株と同等であるにも関わらず、亜硝酸還元酵素活性が野生株の30〜40%しかない。このことから、ORF1の産物は亜硝酸の還元過程に何らかの関与をしているものと推測される。ORF1は349個のアミノ酸残基から成るタンパク質をコードしているが、これに類似したタンパク質は既知のタンパク質の中にはない。 (3)ORF2はLysR familyの転写調節因子と相同な309個のアミノ酸残基から成るタンパク質をコードしており、その挿入変異株ではnirAオペロンの転写量が野生株の半分程度である。このことから、ORF2はnirAオペロンの発現制御に関与するものと考えられる。
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