研究分担者 |
針塚 進 九州大学, 教育学部, 教授 (50113973)
大神 英裕 九州大学, 教育学部, 教授 (20020141)
藤田 継道 兵庫教育大学, 教授 (50099941)
佐藤 新治 大分大学, 教育学部, 教授 (10039513)
植田 浩司 九州大学, 医学部, 教授 (00038647)
しょう地 勝人 (昇地 勝人) 福岡教育大学, 教授 (50036901)
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研究概要 |
発達初期においてなんらかの要因により順調な精神及び神経の発達が阻害されたり,障害が発生する可能性を高く有する乳幼児のことをハイリスク児と呼ぶ。出生時体重は今日使用されている重要な指標の一つである。出生時体重を基準として分類した場合,1500g以下を極小未熟児とし,1000g以下を超未熟児として区別する。ハイリスク児の発達特徴と臨床的対応について検討した結果,次のことがわかった。(1)田中ビネ-式知能検査やWISC-Rの知能検査の結果から,6歳〜8歳の超未塾児の知能指数の分布は下位方向への偏りが認められ,リスクの程度によって知能指数に差があることが明らかになった。知能を構成する要因性の関係(例えば,動作性IQと言語性IQとの関係)にアンバランスがあり,彼らの発達に歪みが存在することも確認された。(2)3歳から5歳になれば,ハイリスク児は健常児に追い付くという見解は部分的に支持された。しかし,WISC-R等の検査結果では(1)に示したような問題もあり,“追い付く"と単純に結論することはできなかった。(3)そうした問題の根幹を形成する要因として,神経学的要因だけでなく,発達初期における生育環境の問題が指摘された。とくに,超未熟児は新生児集中治療室での制約された環境で平均5〜6ヵ月間も入院するので,その影響は無視できない。その間の母親との分離やその後の過保護な育児は発達を阻害する要因と見做された。(4)ハイリスク児,とくに超未熟児は落ち着きの無さや注意欠陥,情緒不安,学校不適応などの行動上の問題を示した。また,脳障害や染色体異常等による発達の遅れも含めてハイリスク児の発達の遅れは心理臨床的対応によって改善することが確かめられた。(5)ハイリスク児が示すさまざまな臨床像に対して適切に対応するためには,親や保育・教育機関だけでなく病院や施設等の密接な連携による総合的アプローチの重要性が指摘された。
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