研究分担者 |
朝比奈 美知子 東京大学, 文学部, 助手 (30251383)
塚本 昌則 東京大学, 文学部, 助手 (90242081)
中地 義和 東京大学, 文学部, 助教授 (50188942)
月村 辰雄 東京大学, 文学部, 助教授 (50143342)
塩川 徹也 東京大学, 文学部, 教授 (00109050)
星埜 守之 東京大学, 文学部, 助手 (10238743)
|
研究概要 |
パリがフランスの中心として,政治・経済・文化の各側面で歴史的に重要な役割を果たしてきたことはよく知られている。本研究で我々は,文学に現れたこの重要な都市の姿を,人文学や社会学の幾多の領域にまたがる多面的な視点から捉える試みを行った。総合的なアプローチへと導かれたのは,パリが単に作家の題材,あるいは霊感の源としてのテーマであるばかりではなく,創出された作品の評価を通じて流行をうみ,文学潮流を支配し,そのことによって再び作家の創作活動に影響を及ぼす文学の創造と受容の中心地だったからである。しかし,個々の作家,個々の文学作品の研究を無視した文学研究は空理空論となるおそれがつねにある。本研究で我々は各時代の代表的事例に即して,パリが文学の生産・消費のサイクルの中で果たしてきた役割を明確にしつつ,作品の発想源,成立過程,そしてテクストの内部でのパリのイメージがどのような「結晶作用」によって定着したかを分析することを目指した。さらにパリをそれだけで孤立した対象として捉えるのではなく,一方ではパリと地方,他方ではパリと西欧文化という二つの異なった関係の網の目の中で考察する作業も行われた。フランスの地方都市に独自で高度の文化と文学が存在するにもかかわらず、パリだけが文化的優位を保ち続けたとすればそれはどうしてかという問題意識に立って探求はなされるべきであり,同様に他の西洋の都市や文化との比較文化学的視点からの考究も不可欠であった。以上の成果を踏まえ,報告書がまとめられた。これには別冊として19世紀のパリの詩人,ジェラール・ド・ネルヴァルの詳細な書誌が付されている。-詩人の創作活動と生活を通して文学都市パリの相貌を想像することができよう。今後もパリを舞台とした作家たちの基礎資料の作成,さらにはそれに裏付けられた総合的な研究をさらに押し進めることが望まれる。
|