研究概要 |
1日本科学史学会は太平洋戦争が始まった年に創立された.この創立期の事情を知る碩学へのヒアリングや資料収集は分担者の菊池俊彦が従来から進行させてきたものを補強するかたちで調査を進めた.これによりわが国の科学史学と科学史学会の形成過程がある程度あとづけられた. 2科学史学と日本科学史学会の成立は,わが国において最初の総合的・学際的学問と学会の成立であったといえる.したがってこの成立過程の分析は,1960年代後半から始まる今日の学問の総合化,学際的協力の潮流を先取りしていた点で,今後の総合的・学際的諸学問と諸学会の展開のための諸問題検討に重要な示唆を与えるものであった。(1)新分野の学会には新学問の権威者がはじめは存在しなかったこと(2)新分野の専門職が存在しなかったこと(3)しかし総合的・学際的分野であることが、時々の時代の社会的背景と深く係わりをもつこととなり徐々に客観的な科学の方法を確立させ,それが新たな職業分野の創出を生み出してきた. 3収集した資料類の画像データ処理はハイパーカードで静止画像によるデータ・ファイル化を実施し,また写真のフォトCD化も試みた.さらにビデオ化(SVHS方式)を試み,マルチメディア的手法の萌芽的段階だが多元的な歴史資料保存の方法論を見きわめることができた. 4存命する関係者のヒアリングには記憶錯誤も含まれ,なおクロスチェックや他の関係者への配慮も必要なので,調査対象者名を含めて全てを公表する状況にはない. 5ここで開発された手法による歴史資料の記録は,さらにリアルタイムに体系的に活用されれば新しい後世への歴史伝達となる.学問としての新分野が期待される.
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