研究課題
総合研究(A)
平成4年度には、産業技術と近代文明とさまざまなかかわりについて議論を重ねてきたが、本年度は、その議論をさらに発展させるとともに、産業技術史を文明の交流と未来への展望の中で総合的にとらえるための方法論を提起することを目的として、まず以下のように5回の研究会を開催した。【.encircled1.】森清「インドネシアで考えたボランティアとビジネスの接点」、【.encircled2.】井上章一「精神鑑定の社会史」、【.encircled3.】中岡哲郎「日本産業技術史研究は何の役に立つか」、【.encircled4.】山口昌伴「日用品にみる日本人の技術観」、【.encircled5.】角山栄「近代物質文明の構造と歴史的展開」。研究会でおこなわれた家庭生活や社会生活の問題から、技術をめぐる国際協力の問題や物質文明論にまでいたる多様なスケールでの幅広い議論が明らかにしたことは、さまざまな文明要素とのかかわりで生じる技術発展を論じるためには、【.encircled1.】地域文化圏の発展に関する視点、【.encircled2.】文化圏の相互交流に関する視点、【.encircled3.】世界的な技術ネットワークに関する視点を多次元的に組み込むことの必要である。研究会における検討に加えて、近代文明の形成と産業技術のかかわりについて、梅棹忠夫を招いてシンポジウム形式で検討をおこない、産業技術が文明におけるさまざまな局面での人間活動の集計として発展してきた過程を確認した。研究会やシンポジウムでの議論にもとづき、産業技術史の文明論的な研究方法を提起するための検討をおこなった。