研究課題
総合研究(A)
1992年9月2日1時16分(世界時)に太平洋中央アメリカ海嶺で発生したニカラグア地震(Ms=7.2)とそれによる津波のニカラグアへの影科を調査した。調査は9月20日から24日までの5日間、ニカラグアの太平洋海岸で3班に分かれて実施された。内容は海岸での「本震震度」「津波の最大水位と来襲状況」の聞き込み調査と「津波の痕跡、被害」の目視による調査、本震を含む地震と津波に関して現地でとれた記録の収集などからなる。これによって(1)津波の最大水位(平均海面上)にニカラグア太平洋全海岸にそっての分布、平均で4〜5m、中央部(エルトランシト)で最大で10m、南北方向へむかって減衰する、をえた。(2)本震震度はMM震度階で2〜3で、首都マナグアでは1であった。(3)最大水位の分布、検潮記録を総合すると長さ200km、幅100kmの低角逆断層の発生が津波の原因となっている。(4)被害は最大水位に比例し、エルトランシトでは海に面した住宅は壊滅状態であり、エルトランシト以外の4〜6mの水位の所では家の壁や戸の破壊が見られた。死者は全域で100名をこし、小供の占める割合が高いのが注目される。聞き込み調査によると津波の来襲はそれほど急激ではなく、除々に水位が増加したため逃げる余裕があった。(5)津波第一波は引き波であるという証言が少なからずあり、検潮記録の結果がうらづけられた。これは低角逆断層の特徴である。第一波押し波の伝播時間は44〜70分で、波数は3波程度であるとの証言を多くえた。これらの結果を総合すると(a)津波の規模にくらべ地震震度が小さく、展型的な「津波地震」である。(b)海溝での長さ200km、幅100km程度の逆断層による津波である。このことはカリブプレートの弾性はねかえりが津波を引き起こしたことを示している。(c)津波は市街地に上陸して減衰し、最大浸水距離で上陸時の水位の1/2になっている。これは長波が上陸時に保持する運動エネルギーを全て失った結果とみなせる。