研究分担者 |
大屋 和夫 名古屋大学, 文学部, 助手 (70109239)
石井 澄 名古屋大学, 文学部, 助教授 (70092989)
広瀬 幸雄 名古屋大学, 文学部, 助教授 (10117921)
後藤 倬男 名古屋大学, 文学部, 教授 (40022355)
今井 章 名古屋大学, 文学部, 助手 (80211754)
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研究概要 |
本研究は,哺乳類の野生個体を人工環境に導入し,長期にわたる恒常的環境条件下で維持しながら,行動を個体史的・経代的に追跡する試みである.有胎盤類哺乳類共通の特性を具えるとされる食虫目の現生種の一つ,ジャコウネズミ(Suncus murinus)を対象動物に選び,その野生集団を起点として,ドメスティケーションに伴う行動変性を明らかにする. 平成5年度には以下の成果を得た. 1)初めて採集地に選んだ沖縄本島(島尻郡大里村)から導入したサンプルについて前年度から引続き維持繁殖をおこなった結果,安定した繁殖成績を得ることに成功した.過去,多良間島(宮古郡多良間村)起源のサンプルのドメスティケーションでは,第2世代以後の個体数確保はきわめて困難であったが,その原因の検討の結果にもとづく新たな母集団の選定が今回の成功をもたらしたと考えられる. 2)第1世代については充分なサンプルを確保して,初期行動・配偶行動・感覚特性・情動性につき基礎資料を収集できた.しかし,繁殖成績の安定を優先させたために,経代維持成績の低下原因となりうる学習能力・集団行動の観測は断念した. 3)上記の諸項目の資料によれば,親世代(野生個体)およびドメスティケーション第1世代のサンプルについての観測所見は,実験動物として安定した段階のサンプルの場合に比べ、(1)行動の発達段階の推移が明瞭,(2)行動レパートリが限定的かつ固定的,(3)行動発現の強度が大,などの特徴をもつことが示唆された. 4)このラインの維持に努め,引続き基礎資料を蓄積することによって,生育環境の長期恒常化にともなう行動変性を個体史的・世代史的に扱う「適応モデル」を提出する準備が整った.
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