研究概要 |
島弧会合部である北海道では背弧海盆の形成,太平洋プレートの斜め沈み込みや前弧の衝突などの活発な造構運動を強く反映して火山活動が継続していることがわかった. 1.火成活動域の移動:後期中新世から第四紀にかけて火成活動域の大きな移動がおこり,北海道北部から南に向かって火成活動域が南下した.その結果,第四紀火山の分布が確立し,従来考えられていた以上に第四紀火山が偏在していることが明らかとなった. 2.火山岩組成と地質構造の関係:第四紀火山岩組成の広域変化を検討した結果,典型的とされる東北日本弧と同様の特徴を持つ西南北海道と北海道東部から南千島,それとは別の広域変化を示す北海道中央部に3分できることが分かった.これは前2者が背弧海盆を持つ島弧-海溝系,後者が島弧-島弧衝突系という,島弧会合部の地質構造の違いを反映していると考えられる. 3.背弧海盆拡大に伴う火成活動:北海道北部の火成活動は,13〜9Maの短期間に活動し,火山岩組成に広域変化が認められない特徴があり,日本海拡大最末期の火成活動と考えられる.しかしその組成は,東北地方の第三紀の火山岩と比べると,より強い島弧的性質を持つ.これは北海道が日本海拡大の回転軸近くに位置するために拡大速度が小さかったためであろう. 4.千島前弧衝突による火山活動:後期中新世から始まったこの事件により,鮮新世から更新世初頭にかけて島弧会合部で特徴的な火成活動があった.これらはアルカリ玄武岩の単成火山群やアイスランダイト様岩石からなる.玄武岩の化学組成にはOIBソースの影響が認められ,活動様式を考えると,千島海溝へのプレートの斜め沈み込みにより生じたリソスフェアーの薄化により,アセノスフェアーの浅部への上昇が引き起こされた結果と解釈した.
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