研究概要 |
DCサーボモータが駆動輪を回し,駆動輪からの摩擦力によりスライダが直線運動し,スライダの一端につけられたテーブル(質量15.7kg)が移動し,その変位をレーザ測長器(分解能1.25nm)で測定してコントローラにフィードバック制御する装置を作成した.この装置を用いての実験により次のような成果がえられた. 1.1μmのステップ応答をPI制御で行うことにより,100回の試行でのテーブル発進後0.5秒での位置決め誤差Eの平均(偏り誤差)e=-1.7nm.Eの標準偏差σ=3.2nmを得た. 2.300mmのステップ応答で,テーブルの変位偏差Δxが大きい領域では変形台形波速度制御によりテーブルを目標位置に近づけ,その後テーブル変位をフィードバックする変位制御をPI制御で行った.100回試行でのテーブル発進後2秒でのe=0.017μm.Eの標準偏差σ=0.16μm,目標位置の±1μmにテーブルが収まる整定時間1.26秒(平均)を得た. 3.駆動輪とスライダとの間の摩擦駆動部において転がり運動の発生する寸前に,モータからの微小トルクTとスライダの微小変位yとの間に非線形のばね特性が存在するが,これは微小領域ほど線形性がよい.そして,このばね特性がnm精度が得られるのに大きな役割を果たしていることが判明した.ただし,非線形のばね特性はテーブル位置により変動するので300mmのステップ応答でのe,σ'が大きくなることも判った. 4.ねじ駆動の場合と比較すると,大きな駆動力は得られない等の欠点と,高速が効く等の特徴が判った. 5.この摩擦駆動装置が,ナノメータの加工精度をねらう超精密平研削盤に応用され,うまく作動した.
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