研究概要 |
汎用性の高い依頼計算プロトコルの開発が本研究の主題である.相対的に計算力の高い補助装置に秘密を漏らさず正しく計算を進め,相対的に計算力の低い装置の秘密に基づく計算の処理時間を短縮するにはプロトコル上の工夫----依頼計算----が必要であるとの考えから,理論と実際の両面から検討がなされてきた.これまで,各種個別問題につき,それらの特徴を巧みに利用して具体的なプロトコルが構成されてきた.しかし,依頼計算を行いたい個別問題群毎にプロトコルを設計し評価するには大変な手間がかかる.そこで,大きな個別問題群を対象とする汎用の依頼計算プロトコルを構成しておき,個々の応用に簡単に適用できるようにすることが考えられる.これが成功すれば,様々な応用分野においてICカードやパソコンなどの相対的に計算力の低い装置の利用価値を向上できる可能性がある.本研究では,初年度において(1)汎用性を持つ依頼計算の理論的検討を行い,(2)高速論理シミュレータを用いた補助装置を開発した.本年度は前年度の成果を踏まえ3項目につき研究を行ない次のような成果を得た.(3)完全問題に対する依頼計算プロトコルの開発:線形計画問題LPや凸計画問題は,単体法等の実用解法が開発されており,入力サイズの多項式の計算時間で解くことができる問題の全体であるクラスPに対する完全問題でもあるので,LPや凸計画問題に対する依頼計算プロトコルを開発した.(4)依頼計算プロトコルの還元法の開発:クラスPに属する問題QのLPへの還元法とLPの解のQの解への変換について検討した.(5)汎用依頼計算プロトコルの実装実験:(3)(4)の結果をワークステーションと高速計算機により実装し効果を測定した.これらにより,真に解きたい問題QをLPに変換する際のサイズの増大が抑えられれば,汎用的な依頼計算の手法として本研究のアプローチは効果的であるという結論を得た.
|