研究概要 |
本研究では三つの課題につき研究を実施した。 (1)安定なシリセニウムイオンの合成と反応性:立体保護効果とヘテロ原子による安定化を併せもつと考えられる(ArX)_3Si^+(X=S,Se;Ar=2,4,6-トリ-t-ブチルフェニル)を(ArX)_3SiClと過塩素酸銀との反応で、また立体保護のみにより安定化される(Ar_3Si^+)をMes_3SiCl(Mes=メシチル)とSbCl_5との反応で合成を試みた。いづれの場合もシリセニウムイオンを中間体として説明できる生成物を得たが、単離することはできなかった。 (2)五配位オキサホスフェタンおよびオキサシレタニドの合成と反応性:高配位化合物の安定化に優れた能力をもつ含フッ素アルコールC_6H_5(CF_3)_2(OH)(Martinリガンド)を活用し、Witting反応の中間体であるオキサホスフェタン、Peterson反応の中間体であるオキサシレタニドの合成に成功し、その構造をX線結晶解析により決定した。オキサホスフェタンについては、3位のリチオ化を経てその位置に電子求引性基を導入し、これらオキサホスフェタンの熱分解機構の検討からWitting反応の機構の全容を明らかにした。オキサシレタニドについても熱分解機構を検討し、Peterson反応の機構に関する新知見を得た。(3)14族元素と16族元素間の二重結合化合物の合成と反応性:Ar^1Ar^2M=X(M=Si,Ge,Sn;X=S,Se)の合成を、(i)テトラカルコゲニドAr^1Ar^2MX_4の三価リン化合物による脱硫、(ii)二価化学種Ar^1Ar^2M:のカルコゲン化反応、の二つの方法で検討した。Ar^1として当研究室で開発した優れた立体保護基、2,4,6-トリス[ビス(トリメチルシリル)メチル]フェニル基(Tb基)を、Ar^2としてメシチル基、2、4、6-トリイソフロピルフェル基(Tip基)を用いた。いづれの方法でもTbAr^2M=Xが生成でき、特に(i)の方法により安定な結晶としてTb(Tip)Ge=Sの単離に成功し、その結晶構造解析、各種付加、環状付加反応を検討した。
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