配分額 *注記 |
4,300千円 (直接経費: 4,300千円)
1994年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
1993年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
1992年度: 2,300千円 (直接経費: 2,300千円)
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研究概要 |
現在,わが国でもっとも世論の分裂している社会問題の一つは,脳死と生体移植に対する態度である。これまでこの問題について膨大な書物や論文が刊行されているが,その中に統一的な方向は全く見当たらないし,この問題について世論をリードすべき立場にある医学者,法曹家,宗教家の間にさえも合意形成はなされていない。脳死問題は単なる医学上の問題ではなく,法律論争,宗教論争,哲学論争なのである。 本研究の目的は,まず第1に,このように分裂した世論の背後にどのような心理的.社会的要因があるか,その要因構造を明らかにすることである。第2の目的は,分裂した世論が,時間の経過とともにどのように収競していくのか,その態度構造の変化を明らかにすることである。第1の目的である脳死に対する態度の要因構造も,このような時間軸に伴う変化の中でより明らかにされるであろう。 調査の母集団は大阪府在住の有権者で,層化二段抽出法により960人のサンプルを選んだ。調査方法は郵送法である。また1年後に,同一サンプルに対して第2回目のパネル調査を実施した。 その結果,(1)脳死や臓器移植の社会的合意形成を困難にしているのは,個人内の認知的要素間がアンビパラントであること,たとえば科学技術を信奉する一方でアニミズム感覚をもったり,心身二元論と一次元のはざまで死生観がゆらいでいること,(2)医療現場における医師の切名心やインフォームドコンセントの不足によって,不信の念が持たれていること,(3)脳死や臓器移植を自分の問題として考えるときと,自分の愛する人の上に生じた問題として考えるときで態度が正反対になること,つまり態度が個人内においてもまだ安定した構造を持っていないことなどが明らかにされた。
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