研究概要 |
自己に関わる情報処理システムを明らかにするために,本研究では次の3つのテーマを中心に研究を行った. 第1のテーマは自己がどのように表象されているかを明らかにすることであった.まず,基礎的研究として,顔のプライミングを取り上げ検討した.次に,抑欝者の自己表象を感情と自己注目との関係で検討した.自己注目が高いとネガティブな感情が持続しやすいことが見いだされた. 第2のテーマは自己に関する知識が,その表象との関連で,どのように収集されるのかを明らかにすることであった.まず,自己に関する表象を測定し自己関連情報収集行動との関係が検討された.現実自己と理想自己の差と未来可能自己の相対的位置が重要な役割を果たすことが示された.次に,抑欝傾向と感情状態が自己関連情報収集行動にどのような影響を与えるかが検討された.抑欝者は抑欝的自己表象を再生産するような自己関連情報収集行動を取りやすい可能性が示唆された. 第3のテーマは,自己表象における感情ノードが社会的判断や社会的行動にどのような影響を及ぼすのかを明らかにすることであった.失敗経験により生じたネガティブな感情が援助行動の「道具性」と「行動意図」の認知にどのような効果を持つかが検討された.結果として,先行失敗自体と同一の場面には匿名性の効果が認められず,失敗を知人に目撃されるかいなかに関わらず,援助の「道具性」と「行動意図」が高まることが示された. 以上のような研究を踏まえ,自己の表象の様態・形成・維持について,感情との関係を中心に,検討された.
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