研究分担者 |
板垣 文彦 亜細亜大学, 教養部, 講師 (10203077)
内藤 佳津雄 日本大学, 文理学部, 助手 (30246798)
横田 正夫 日本大学, 文理学部, 講師 (20240195)
厳島 行雄 日本大学, 文理学部, 助教授 (20147698)
山本 麻子 日本大学, 文理学部, 助手 (70200780)
|
研究概要 |
本研究では,感情と認知・情動の関わりを多面的に検討し,認知と感情・情動の相互関係を含むような全体的システムのモデル化を行うための枠組みを提出することを目的とした。本年度の研究成果は以下の通りである。1)気分チェックリスト日本版の作成を行うためにThayerのActivation Adjective Check Listに基づき日本語版を作成し因子構造を検討した。その結果,活性,疲労,緊張,弛緩の4因子が抽出され,20項目による日本版SADACL(短縮版気分チェックリスト)を作成した。2)音楽を用いて幸福な気分と悲しい気分を誘導し,それぞれの状態における幸福な物語と悲しい物語の記憶成績から,記憶における気分一致効果について検討した。その結果,幸福な気分のとき悲しい物語の再生成績が抑制される傾向がみられた。3)感情・情動と認知の両方に障害をもつ精神分裂病患者における認知と情動・感情の関係について検討した。実験的に文字刺激を用いた理解の範囲を検討するとともに患者の自覚症状を調べた。その結果,陰性症状と複雑な刺激条件における理解の範囲のあいだに負の相関が認められた。4)覚醒の知覚と情動との関連について,自己の心臓の拍動の知覚能力の個人差と不安の関連を実験的に検討し,心臓活動の知覚能力によって不安の変化パターンに差異が認められた。5)動物に対する恐怖を喚起する認知的要因について検討し,哺乳類・鳥類,虫類,爬虫類等の3群の動物群に対して,異なる認知的要因が恐怖感を規定していることが示唆された。6)顔面表情の認知に関わる視覚的情報次元と感情的意味次元の対応が,SD法を用いて検討され,顔面構造部分の傾斜性と湾曲性・開示性がそれぞれ快-不快と活性化の次元に対応することが示唆された。以上のような個々の結果は認知と感情・情動の相互関係を多面的に明らかにした。さらにシステム全体としての枠組みを作成するためには検討を重ねていく必要がある。
|