現代社会の持つ重要な特微の一つに単身者文化の優先がある。それは、個人主義的価値観の優先と言い換えても良い。これまで日本における飲酒文化と飲酒行動との対応パターンを分析するための中心的な分析視角は、家族中心的アプローチであった。 しかし、こうした時代の基本的特微の変化は、単身アルコール依存症者の飲酒行動の実態を分析する必要性をわれわれに示している。単身アルコール依存症者の専門施設である新生園の取り組みの分析を通して、われわれは飲酒文化における個人主義的価値観の優越は、社会階層的には底辺層の飲酒行動により大きなマイナス効果を及ぼしていることを明らかにした。 さらに、断酒会リーダーには国や自治体、企業などに断酒活動への協力を働きかけたり、教育機関やマスコミを通じた啓蒙・奉仕活動により、組織の拡大、充実、活性化等に寄与することが期待されている。しかしリーダー同士の間で、組織運営に関する指導方針に合意がないまま競合がなされた場合には、その組織の活動が停滞したり、組織分裂が生じることを宮城県の事例において実証した。
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