研究概要 |
平成4年度には,新しい介護重視型有料老人ホーム2施設において入居者調査を実施し,有効回収数238世帯を得た。その主な成果は,(1)対象施設では,開設1年めであり入居者が比較的若いため介護ニーズは顕在化していないが,入居者に安心感を与える効果を果たしている。(2)共用施設の利用状況は,日常生活支援的施設はよく利用されているが,趣味活動用施設は多様なものが用意されている割には利用頻度が低いものが多く,共用施設の種類面積比など今後改良の余地が大きい。(3)専用住戸では,段差をなくし安全設備を備えているが,ベッド就寝や高齢化に伴う身体障害については十分対応できていない。将来介護ニーズが増大した段階において,共用施設の用途変更,専用住戸の改造,また介護スタッフの充実などの問題が予想されるが,生活的に自立している段階から,重介護が必要な段階まで幅広く対応しなければならない有料老人ホームの課題が明らかになった。 平成5年度には,開設後10年を経ており,入居者介護の経験が豊富な有料老人ホームにおいて,入居者及びケアスタッフを対象に面接調査・観察調査・質問紙調査を実施した。その主な成果は,(1)入居者と同年齢の在宅老人との疾病状況は近似しており,調査結果が一般在宅老人にも適応できることが明らかになった。(2)高齢者の疾患や心身障害の発現率,およびされらに対応する建築的・用具的支援と人的支援の必要性を5歳階級別に明らかにした。これらの結果は,いかなる居住環境においても当該老人グループの年齢構成をふまえて,住環境の物的改造,人的ケアの必要量を予測するための基礎資料となりうることが分かった。
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