研究概要 |
本研究の実施によって次のような研究成果を挙げ,それぞれ印刷公表した. (1)有機伝導体(BEDT-TTF)_2KHg(SCN)_4,(BEDT-TTF)_2NH_4(SCN)_4における角度依存磁気抵抗振動効果:結晶構造がほとんど同一であるこれら2つの物質は,その角度依存磁気抵抗振動効果が定性的にも大きく異なることが知られ,謎となっていた.われわれは磁場中の2軸回転によりフェルミ面のマッピングを行い,KHg-塩では平面状の開いたフェルミ面,NH_4Hg-塩では円柱状のフェルミ面がそれぞれ角度依存磁気抵抗振動に寄与していることを明らかにした.さらにKHg-塩における磁気抵抗振動をモデル計算によって定量的に再現することができた. (2)層状合成金属であるグラファイト層間化合物において極めて明瞭な角度依存磁気抵抗振動効果を観測した.SbCl_5をインターカレートしたグラファイトにおいて角度依存磁気抵抗振動効果とともにシュブニコフドハース効果を観測した.これらを総合してフェルミ面の決定を行うことができる. (3)GaAs/AlGaAs超格子系を利用し,円柱状のフェルミ面を設計して作成することにより角度依存磁気抵抗振動効果を観測することに成功した. (4)円柱状のフェルミ面に対していろいろな対称性の変調がかかった場合について,角度依存磁気抵抗振動効果がそのように現れるかをモデル計算によって検討した. (5)GaAs/AlGaAsヘテロ界面2次元電子系に変調磁場をかける試みを行った.1次元のすだれ状ゲード電極を強磁性体で作成し,一様磁場を変調することを試みている.格子不整合による歪みの効果によるワイス振動と周期磁場による効果を分離する条件を探っている段階である.
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