研究概要 |
本研究により得られた研究成果の概要を以下に列挙する. (1)Cu_3Al(+Pd)合金の[110]TA_1フォノン分枝の挙動は,プレマルテンサイト状態が[001]応力により18Rマルテンサイトへ向かって不安定化することを示す.また,3次弾性定数の測定結果は,非調和性が著しいことを示す.得られた結果を総合すると,マルテンサイト変態はソフトフォノンモード機構にはよらず,非調和効果による,と結論される. (2)AuCuZn_2合金の[110]TA_1フォノン分枝の温度変化挙動は,格子不安定性がHeusler相の特性であり,またB2相の格子力学的性質が正常であることを示す.また,Heusler相で見られる2/3[110]弾性散乱ピークは,B2格子内に規則配列している空孔の凍結に由来する. (3)[110]TA_1フォノン分枝の温度変化は,AuZn合金のマルテンサイトがB2格子(110)面の3層周期変調構造であることを示唆する.実際構造解析の結果は,マルテンサイトが空間群P3(C_3^1),trigonal構造であることを明らかにした. (4)AgZn,AuCuZn_2及びNiAl合金のβ1相について,[001]圧力下で[110]TA_1フォノン分散を測定した.AgZnの場合はフォノン分散の挙動は正常で,格子不安定化は生じない.一方,AuCuZn_2及びNiAlでは,冷却した場合と全く同様の格子不安定化が生じる.フォノン分枝の面間力解析の結果は,前者の応力誘起マルテンサイトが18R構造であることを示す.また,NiAlの[110]TA_1分枝に見られる1/6ディップは,マルテンサイト変態の前駆現象ではない,と結論される.
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