研究分担者 |
岩橋 純子 建設省, 国土地理院・地理調査部, 技官
齊藤 隆志 京都大学, 防災研究所, 助手 (10225716)
吉岡 龍馬 京都大学, 防災研究所, 助手 (60027290)
諏訪 浩 京都大学, 防災研究所, 助教授 (00093253)
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研究概要 |
滋賀県比良山地東斜面の大谷川流域内に3つの実験流域を設定して現地調査をおこなった.直列3段型タンクモデルがこれらの流域について適用できることが示された.ただし,中谷流域については直接流出をシミュレートする最上段タンクのパラメーターを変える必要があった.これはこの流域の大部分を占める,かつて裸地であった斜面の浸透能が裸地のそれに近いことを反映したものである.また流出特性と水温・水質の観測結果から,ここでは夏季の強雨の大部分が直接流出となり,地下水は主に融雪水で涵養されていることが,うかがえる. 比良断層の断層崖の上流端を縁取る侵食前線よりも上流の山頂平坦面に属する小流域では,土層調査と自記テンショメーターによる斜面流観測を行った.土層断面から試料を採取して細粒物質の含有量と鉱物分析を行った結果,化学的風化はあまり活発ではないが,物理風化がゆっくり進行し,粘土粒径の細粒土がつくられ,斜面流によって移動し,特定の部位に集積し,それにしたがって土層が局部的に沈下して,今見られるような微地形が形成されたことが推測された.自記テンショメーターによって観測された土層中のサクションの分布は湧水の中間流出成分と密接な関係があることを示す.このことから,B層の飽和によって透水係数が急増し,斜面に沿って下方への流れが卓越するものと思われる. 侵食前線上およびその下流側の荒廃傾向にある部分での水文地形学的プロセスの調査は地上写真の撮影とディジタル地形モデルの数値解析によって行った.植生が貧弱であるために,冬の無雪期に表層土が凍結し,それが融解するときに流動して地面削剥と植生回復の阻害が起こることがわかった.マクロ的な地形分析の結果,そのような部分は火山山腹と新しい断層崖に共通的に見られる,傾斜が比較的急で凹凸度や傾斜変換が少ない特殊な斜面であることがわかった.
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