研究概要 |
本研究ではまず,Ga_2Se_3のMBE成長においてGa空孔の配列制御を試みた.その結果,(100)GaPおよび(100)GaAs基板上へのMBE成長において最適条件でGa空孔が1方向([011]方向)に規則配列し,VI/III比(SeとGaの供給比)によりGa空孔の配列が制御できることを明らかにした.次に,Ga_2Se_3の透過スペクトルの測定を行ない,Ga空孔が規則配列したGa_2Se_3では,そのバンドギャップ(約2.1eV)以上の波長範囲で吸収係数に大きな異方性があることを明らかにした.すなわち,[011]偏光に対する吸収係数が[011]偏光に対する吸収係数よりも大きく,特定の波長範囲(525nm付近)で吸収係数差が10^4cm^<-1>以上と極めて大きいことを明らかにした.さらに,反射スペクトルの偏光依存性から,屈折率にも異方性があること,すなわち複屈折を示すことを明らかにした.これらの光学的異方性はGa空孔が不規則に配列した場合には観測されなかった.この子とはGa空孔の規則配列により光学的異方性が現れたことを示している.また,Ga_2Se_3のフォトルミネッセンス(PL)測定を行ない,Ga空孔が規則配列したGa_2Se_3において,610nm付近のブロードな発光を観測した.また,このPLスペクトルの偏光特性において,[011]成分の発光強度に比べて[011]成分の発光強度が大きいことを明らかにした.これは,電子遷移の確率が[011]偏光に対する方が大きいことを意味しており,[011]偏光に対して[011]偏光の方が吸収係数が大きかったことと一致している.一方,Ga空孔が不規則に配列したGa_2Se_3では,610nm付近の発光はほとんど観測されなかった.このことから610nm付近のPL発光がGa空孔の規則配列に基づいていると考えられる.このようにGa_2Se_3は,半導体的性質を示し,かつ光学的異方性を示す材料系として特異な存在であることが明らかとなった.
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