研究概要 |
1.元素マッピング専用検出器の開発:(1)検出システムの構築;パラレル電子エネルギー損失分光法(PEELS)と走査透過電子顕微鏡(STEM)を組み合わせて,元素濃度を像の濃淡として表す元素マッピング法を高速に行うため,35チャンネルと少ない素子数のフォトダイオードアレイ(PDA)を用いてエネルギー損失スペクトルをコンピュータに取り込み,元素マッピング像を表示する検出器,制御・増幅回路及びソフトウェアからなるシステムを開発した.1画素当たりのスペクトル獲得時間は約1.2msecと通常の1024チャンネルのPDAより20倍高速である.(2)検出器の基本特性の測定;電子線シンチレータからの光が屈折のためにPDAの窓と受光面の間で広がり,大きなチャンネル間クロストークとなることを見出した.その対策として窓のないPDAを用意し,光の漏れを低減した結果,チャンネル間クロストークは4%と低い値とすることができた.また,検出器の検出量子効率(DQE)を測定し,実際に元素マッピングを行う低い電子強度では検出回路における電磁的擾乱のためDQEが低下しており,より強力な電磁シールドを行う必要があることが分った. 2.薄膜レンズを用いた球面収差補正による高電流密度電子プローブの実現:散乱断面積の低い高エネルギー損失の内殻励起エッジを用いて高解像度元素マッピングを行うために,電子レンズの球面収差を薄膜レンズを用いて補正できることを実験と計算により明らかにし,高電流密度の微小電子プローブを実現した. 3.元素マッピング像の観察:実際にカーボンマイクログリッド上の窒化ボロンの元素マッピング像を観察し,カーボンと窒素・ボロンの分離された像を得た.また,酸化ニッケルを観察した結果,スペクトル強度の低い酸素やニッケルについてもマッピング像が得られ,PEELSを用いた高感度の元素マッピングが達成できた.
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