研究概要 |
申請者らが開発したアーク放電プラズマジェットCVD装置により直径20mm,厚さ1.2mmの気相合成(CVD)ダイヤモンド薄板を合成し,このダイヤモンド薄板を用いて切削バイトを作製した.まず,合成されたCVDダイヤモンド薄板をYAGレーザにより切断し,3mm×3mmのチップを得た.次に,このチップ表面をYAGレーザ照射により最大表面粗さ3μmまで平坦化を行った.その後,熱化学反応を利用したダイヤモンド研磨装置によって,刃先を形成する3面を研磨し,先端の丸み半径0.5μmの刃先に仕上げ,シャンクにろう付けをして切削バイトを作製した. この切削バイトを用い,アルミニウム合金を被削材として,エアスピンドルを備える超精密研削加工機を切削加工に流用して切削実験を行った.切削実験は,切削速度380m/min,切り込み3μm,送り速度7.5μm/rev,切削液に灯油を用いた.比較として,同形状に作製した天然ダイヤモンド切削バイトについても同条件で切削実験を行った. 切削距離24kmまで切削を行った結果,逃げ面摩耗は天然ダイヤモンド切削バイトより優れ,すくい面摩耗についてはほぼ同等であった.摩耗の形態については,逃げ面およびすくい面ともCVDダイヤモンドと天然ダイヤモンドでは同様であった.摩耗量の相違については,刃先を形成する3面の結晶面方位をX線回折により検討し,CVDダイヤモンド切削バイトの方が逃げ面では摩耗しにくい(111)面で構成されていることがわかった. 以上の結果より,CVDダイヤモンドは天然ダイヤモンドと比較しても十分な機械的強度を有し,超精密切削バイトとして用いることができることを明らかにした.
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