研究概要 |
後退翼負圧面境界層に成長する横流れ渦は、乱流遷移を促進させるために空気抵抗の面から考えると好ましくない現象であるが、発想を変えて、著しい抵抗増をまねくこと無しに物質混合を物体表面で促進させる目的で考えると極めて有用な流体現象である,という立場から研究を行った。その結果、横流れ渦の発生基準として新たにパラメータを導出することができた。すなわち、横流れ不安定を一種の遠心力不安定(遠心力が壁面に平行な方向に作用する)と考え、凹面壁に成長する境界層が遠心力不安定によって不安定化し、ゲルトラー渦を発生させることと対比し、パラメーター,C_2=Re√<θ/R>を導いた。ここにRe=Uθ/nuで局所レイノルズ数Uは局所的なポテンシャル流速,θはその位置の運動量厚さ,nuは動粘性係数で、Rはその位置における主流の流線の壁面に平行な面内の曲率半径である。このパラメーターC_2〓10を越えると横流れ渦が発生することが確かめられ、横流れ渦の発生基準が得られた。また、確かめる目的から同じ横流れパラメータC_2を同じ横流れ不安定場である回転円板に対しても適用して調べた結果、横流れ渦(この場合らせん渦)の発生基準はやはりC_2〓10で生じることが判明した。従来用いられてきた横流れパラメータX_1(=δ0.99b/h,δ0.99は横流れ速度分布から求めた境界層厚さ,bは速度分布の最大値,nuは動粘性係数)に比べ、境界層内の粘性に支配された部分の情報を必要とせず、非粘性の状態(ポテンシャル流量)のみからパラメータを計算することができるぶん、新たに求められたパラメータC_2の方が便利であることが判明した。
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