研究概要 |
本研究は,ターボ機械に発生する流動異常現象を局所的な流動状態から予見して自動的に回避し,つねに最適条件で作動する機械要素の開発,すなわちターボ機械の人工知能化のための基礎研究であり,局所流れのセンシング技術とマイクロアクチュエータを駆使した流れの制御技術の開発に焦点を置いた。本研究で得られた結果を要約すると,次のとおりである。1.センシング技術に関しては,ターボ機械で最も重大な異常現象である旋回失速の予兆の検知に焦点を絞って実験的研究を行い,次の結論を得た。(1)旋回失速の予兆の検知には,動翼前縁付近のケーシングに高周波数応答小形圧力センサーを設置し,動翼回転に同期した信号により,圧力変動の相関値および分散値を予知パラメータとして監視すればよい。(2)予知パラメータは統計量であるので,実時間で監視するために時間遅れによる誤差を補正する方法を提案し,旋回失速予知システムを構築し,軸流動翼および斜流動翼に適用して,本システムの有用性を確認した。2.マイクロアクチュエータによる局所流れの制御技術については,柱状物体の壁面に圧電素子を貼付し,境界層を微小励起することによる剥離の遅延の可能性について検討した結果,次の結論を得た。(1)従来,柱状物体のカルマン渦放出周波数の引き込みは,微小振動では行えないといわれていたが,物体前縁の剥離泡再付着点を励起すれば10数ミクロンの振動で周波数の引込みが行えることを発見した。(2)カルマン渦放出周波数を高い周波数に引込むことにより物体後縁側の剥離点を下流側へ移動させることができ,抗力の低減に有効である。(3)柱状物体が迎え角を有する場合,背面側の前縁剥離泡再付着点を励起するとよい。(4)境界層の微小励起により後流の乱れスペクトル分布は狭い周波数領域に集まる。従って,乱流騒音にも卓越周波数が現れ,騒音のアクティブコントロールが行い易くなる可能性がある。
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