研究概要 |
本研究は以下に示す目的をもって出発した.すなわち 「情報システムの大規模化に伴い,システムが自律的に自己を管理する能力を管理する能力を持つことが必要になると考えられる。そこで本研究では大規模な自律分散システムにおける情報処理の原理を研究することを目的とし,自律能力の規範として生物社会の形態に着目したパラダイムの展開を図る.すなわち,生物社会が持つ能力原理の数理モデル化を行い,情報処理システムの持つ諸問題にアナロジーとして取り入れることによって目的とする機能の実現および応用に基づく検証を図る.」 上記の目的に向けて本研究は生物生態系社会における諸現象のアナロジーに基づき,現在,「複雑系システム」として称される新パラダイムにおいて,大規模自律分散システムを構築するための数理モデルと理論の展開・開発をおこない,様々な応用を通してその有効性を検証したものであり,該当分野の発展に貢献するものであると考える. 本研究の主な成果の概略を示す. 生態系社会での情報伝達は,匂い,音,フェロモンなどの伝達媒体に依っている.この特性を情報の“場"概念として導入し, 1:各システム要素が自律的に振る舞うための情報を場を介して相互作用しあう振動ポテンシャル法理論の構築と応用を示した. 生物生態系社会の本質的側面である動的性に対応するための必須の機能である“学習・進化"の概念を大規模自律分散システムに向けた機能開発として, 2:フェロモンによるアリの情報伝達機構のアナロジーとしてTSP問題向きアントアルゴリズムの開発, 3:進化的システム構築を支援するための,拡張型遺伝的アルゴリズムであるフィルタリングGAの開発, 4:群としての協調的行動戦略獲得実現へ向けた群強化学習法,遺伝的強化学習法の展開とゲーム環境を利用した“学習の質"に関する理論的展開とその評価を行った.
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