研究概要 |
数値誤差が発生しても安定して動作する幾何アリゴリズムの設計法として我々が提案している「位相優先法」の適用範囲を広めるとともに,その性能を理論的および実験的に評価した. 適用範囲の拡大に関しては,初期の研究で対象とした2次元点ボロノイ図の逐次添加法に加えて,2次元点ボロノイ図の分割統治型構成法,2次元線分ボロノイ図,2次元多角型ボロノイ図,3次元点ボロノイ図の構成法,3次元凸包の構成法,凸多面体の積集合の構成法,ラゲ-ルボロノイ図の構成法,線分交差図形の構成法,一般の図形に対するボロノイ図の近似構成法,制約つきドロネ-分割の構成法へ適用して,数値的に安定なアルゴリズムの作成に成功した.さらに一般に,対象がもつべき組合せ位相的性質で,それが満たされているか否かが小さな計算量で判定できるものが一つでも見つかれば,位相優先法が効果的に適用できることがわかった. 一方,性能の評価については,次のことがわかった.理論的な立場から見ると,本手法はユークリッド幾何学より少しゆるい組合せ幾何学の中で問題を定式化しなおして解いていることがわかった.実験的には,上の具体的アルゴリズムのいくつかをプログラムとして実現し,大規模な問題を解かせたところ,退化した入力に対しても数値的に安定に動作すること,計算精度が不十分な環境では,精度に見合った近似解が得られることなどが確かめられた.また,これらの出力が真の解自身ではなくその近似であることが,実用的な応用問題を解くときには少しも問題とならないことなどもわかってきた。
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