研究概要 |
南九州に広く分布しているしらすは水に対する抵抗力が小さく,自然斜面において侵食崩壊や表層すべり・剥離崩壊が繰り返し発生している.しらす斜面の風化・侵食作用による崩壊素因の変化を定量的に捉えることは,防災対策を策定する上で重要となる.本研究は,室内実験および現地観測により,しらす斜面の風化の度合いおよび侵食に対する抵抗力を定量的に評価し,これらの作用の経時変化を評価する方法を確立し,その成果を利用した斜面の崩壊危険度を予測する方法を提案することを目的とする.主な結論は次の通りである. 1)乾湿の繰返しに伴うせん断特性の変化は,変形性状に現れ,岩質材料的な破壊様式から土質材料的な破壊様式へと変化する. 2)飽和時の残留せん断強度よりも大きなせん断応力が作用した下で平衡状態にあるしらすは,水浸を受けると破壊する. 3)小さな密度のしらす土粒子は単体では流され易いが,異なる密度の土粒子が混合したしらす土塊では,小さな密度の土粒子が流されても侵食は進行せず,大きな密度の粗粒子が流されることによって進行する. 4)しらす地山では切土斜面整形後,時間の経過と共に山中式土壌硬度計による貫入抵抗が低下する. 5)セメントで固結したしらすの風化侵食特性から乱さない地山しらすの特性を推測できる. 6)斜面災害の発生は崩壊の素因,誘因および災害拡大・抑制因子のグループに分けることができる.これらの因子をリスクファクターとみなし,多重ロジスティック分析を行うことにより,災害・防災ポテンシャルの変化をより定量的に評価することができる.
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