研究概要 |
炭酸塩が地盤形成に与える影響を調べるために,主に以下の海域および地域で土試料のサンプリングを行った。 (1)駿河湾,(2)相模湾,(3)東京湾,(4)大阪湾,(5)土佐湾,(6)瀬戸内海,(7)鹿児島湾,(8)東京都足立区,(9)静岡県森町。 これらの試料について,炭酸カルシウム含有量,土粒子密度,粒度分布,液性・塑性限界,一軸圧縮強さまたはベーンせん断強さを調べた。また,試料によっては重金属含有量についても調べた。その結果について,炭酸塩とほかの要素との相互関係を調べた結果,主として次のことがあきらかになった。 (1)炭酸カルシウム含有量は海底堆積土のセメンテーションの根源となっており,極めて微量な含有量でもせん断強さを左右する。このことから、堆積物の強度特性の深さ分布のばらつきを説明できる。つまり,多くの海底土において,せん断強さが深さ方向にばらつくのは,粒度特性と炭酸カルシウムの影響である。もし,粒度特性が変化しない土断面では炭酸カルシウムが重要な要素となる。 (2)炭酸カルシウムは自然地盤の圧密効果を促進する。炭酸カルシウムが多く含まれるほど含水比は少なく,またその土の液性限界および塑性限界は減少する。この効果は炭酸カルシウムの凝集効果と考えられるが,(1)のセメンテーションと複合的に作用して堆積物の工学特性に影響している。 (3)炭酸カルシウムが海底に一定速度で堆積していると仮定することによって,海底での堆積環境を推定することができる。また,炭酸カルシウム含有量から土粒子の堆積速度を推定する方法を確立できた。この方法で推定した堆積速度は^<14>C法やテフラによる方法の結果と一致した。
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