研究概要 |
弱混合河口成層密度流における塩分拡散の問題は利水,農業工業,漁業にかかわり,今日では河口堰などで社会問題にもなっている.この問題に関しては,従来,定常流を想定した研究が主で,混合要因についての検討はせん断流不安定と河川に自然に内包する乱れにとどまっている.そこで、本研究においてはより現実的に気圧,潮汐,河川流量,風の効果等の非定常流要因が河口部の塩分拡散にいかなる影響を示すかを検討した.また,その結果をもとに任意の地点と時刻についての表層塩分値の予測精度を格段に向上させることを試みた. 研究は主として弱混合河口成層密度流の典型が見いだせる石狩川下流域の観測をもとに遂行された.観測は1992,1993,1994年の夏期に,ほぼ,2か月ずつ実施したが,観測精度は年々向上させ研究目的を十分達成できるだけの質的,量的データを得ることができた.研究成果は以下のように要約できる. 1)河川下流域の表層塩分時系列の変化を支配する主要因は風であって、気圧や潮汐の効果はきわめて小さい. 2)塩水楔平均の連行係数は次式で与えられる.E=1.92×10^<-6>e^<0.405W> for 118m^3/sec, E=2.24×10^<-6>e^<0.281W> for 146m^3 3)風速の増加→波浪を発生→上層流れ内の乱れの増加→上層塩分分布の一様化→界面近傍の密度勾配の増加→表層塩分の増加という塩分の拡散過程が確認された. 4)平均流速場の流れは,ほぼ,全域で安定である. 5)流量の増加により河川水への塩分拡散は促進されるが,河川水の塩分濃度は逆に減少する. 6)橋脚や河床地形により界面が著しく破壊される塩分拡散に与える影響は局部的である. 7)風速データを与えるだけで任意の地点,任意の時刻の表層塩分がきわめてよい精度で予測できる.
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