研究概要 |
本研究は,病院,特養,老健に巾広くその対象を求め,同一の調査・分析手法で,横断的に,入院・入所の療養生活をおくる高齢者の生活実態,看護・介護の実態,高齢者個々人のADLをはじめとした諸属性を分析・把握し,これ等を通じて,高齢者療養環境のあるべき姿について建築計画的知見を得ようとするものである。 2年度間で,病院:3,老健:3,特養:3,の調査対象において,(1)入院・入所生活をおくる高齢者1人ひとりのADL能力を把握するアンケート調査,(2)看護・介護の業務の詳細を収録する調査,(3)高齢者の1日の生活実態を収録する観察調査,(4)高齢者の生活環境を捉える実測マップ調査,の4調査を横断的に実施した。 この調査結果について,次の観点からの分析・考察を行ない,最後にこれ等を総合して,高齢者療養環境計画上の要点をまとめた。 (1)高齢者の基本的生活行為特性からみた類型化に関する考察……延べ700名の療養生活をおくる高齢者のADL能力上の諸特性を多角的に分析・解明し,行為場所や介助の程度の観点から,主要な類型を導いた。 (2)高齢者の一日の生活実態とその類型化に関する考察……延べ149名の高齢者の1日の生活観察調査の結果から,その生活展開の多様さの実態を詳細に分析・把握すると共に,滞在場所や行為内容に着目して生活行動パターンの主要な類型を求める考察を行なった。 (3)高齢者療養施設における看護・介護の実態に関する分析……延べ43名の看護婦・介護士の業務実態に関する調査に基づいて,高齢者療養環境施設における看護・介護の実態及びその特性を分析すると共に,施設系列別の業務特性,看護婦と介護士の業務内容の差異についても論じた。 (4)総合的考察……以上を総合し,高齢者療養環境の計画上の要点について知見をとりまとめた。
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