研究概要 |
純モリブデン粉末と遷移金属炭化物(TiCまたはHfC)の粉末にメカニカルアロイング法および熱間等方加圧法(HIP)を適用することにより,目標とするモリブデン合金の開発を成就した。すなわち,開発したモリブデン合金は,市販モリブデン合金の中で現在最も広く使用されているTZM合金に比べて,格段に低温での靱性に優れるとともに,再結晶や粒成長が起こりにくく,照射による脆化が少なく,また高温での強度も高い。これ等の合金の微細組織の特徴は,結晶粒径が10〜400nmと極めて微細であること,高密度の転位が存在すること,および極めて微細な炭化物の粒子が主として結晶粒界に多数認められること,等である。また,この組織は従来モリブデンにとって極めて有害な不純物であるとされてきた酸素の影響を受けにくいこと,したがってこれらの合金は酸素のコントロールを特に必要としないという利点をもつ。しかし,酸素不純物を除去することによってさらに特性が向上するものと期待され,現在その研究を進めている。さらに,金属のなかで最も高い融点(〜3400℃)をもちながら,モリブデン以上に粒界脆化が問題となるためにその使用が著しく制限されているタングステンについても同様な靱性改善のための合金の開発研究を計画している。
|