研究概要 |
研究のねらいは,厚さ10nmオーダーの表面薄膜層の機械的性質を測定するため,ナノインデンテーション試験法及びその解析方法を確立することにあったが,初期の目的はほぼ達成した.恐らく,同種試験機としては世界最高の性能を持つ試験機の開発に成功した.得られるデータの信頼性は非常に高い.以下,具体的な成果を羅列する. 1.ナノインデンテーション応力場の三次元有限要素法(FEM)解析を確立し,薄膜構造体の三角錐圧子による変形時の挙動を模擬することができた.これにより,実験データより膜の弾性常数推定が可能となった. 2.ナノインデンテーション試験機の性能向上を果たした.とくに,交流光源を用いた光ファイバー変位計を開発し,0.7pm/√Hzの分解能と0.2nm/℃のドリフトレベルを達成した.本試験機により圧痕深さ10nm,荷重1μN程度の試験が可能となる.また,本試験機は圧子と試料表面とのそう大変異を制御した試験を行なうことができ,その試料表面同定精度は0.2nmである. 3.種々の材料の極表面層のナノインデンテーション評価を行った.深さ10nm以下の表面層評価においては,圧子先端形状が敏感に影響する.この影響を正確に考慮することにより,極表面層においては,せん断応力が理論強度に達するまで塑性変形を開始しないことが判明した. ナノインデンテーション試験の応用として,磁気記録媒体の評価を行ない,その結果と摩擦・摩耗などのトライポロジ性能との関連を明らかにした.
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