研究概要 |
本研究は,不安定分子系のポテンシャルエネルギー曲線,励起エネルギー,遷移確率などのUNO-CI計算手法の確立を目的とした.この目的を達成するために,UNO-CI用のプログラムをAlchemyIIプログラムに追加する作業は完全ではないが完成に近づきつつある.すでに線形(H)nクラスターおよび三重項メチレン二量体の基底および低い励起状態のポテンシャル曲線の計算に適用してその有効性を検討し,THEOCHEMに発表した.さらに,上記物質系でUNO-CASSCF計算を実行し,UNO-CIがMCSCF計算の良い出発点であることを確かめたこれらの計算により外部電場が存在しない場合の電子構造の高精度計算についての当研究室での方法論が確立した. 次に,これらの電子系に強い外部レーザー場が印加された場合の動的挙動を数値計算により厳密に調べる方法,すなわち量子論的リュービュウ方程式の数値解法(NLA法と略す)の一般理論を構築した.さらにNLA法を周波数依存超分極率の非共鳴および共鳴条件下での数値計算に適用し,その数値的安定性,計算精度などを検討した.また,実在系として,オクタテトラエンに適用したところ,実測の傾向と良い一致を示した. 次に有機非線形光学結晶(DNBB)の結晶構造を決定している因子を解明するために6量体までのクラスターをab initio計算したところ,水素結合が最も重要な因子であることが結論された.二次の非線形感受率と一次の超分極率(β)の大きい有機結晶の分子設計には反転中心を破るように水素結合をうまく利用することが大切であることが結論された.
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