研究概要 |
分子オーダーの大きさで,極めて強い分子表面間相互作用をするサブナノ空間中の分子挙動を、微小吸着熱測定,X線回折測定,分子吸着測定から総合的に調べた。特にナノオーダーの分子集団における相転移そのものの存在性からも検討した。超臨界NOはサブナノ空間中でダイマー(NO)_2になり,超臨界気体・擬蒸気転移を生ずる。相互作用が極めて小さいCH_4の場合にも、高圧吸着実験の解折から,サブナノスペースの分子場により,超臨界・擬蒸気転移を起している。D-NMRによる検討も加えると,サブナノスペース中でのベンゼンはバルク液相よりも高い移動性を持っており,特殊なベンゼン分子集団体相が実現している。これらの分子集団相転移現象の中でも,吸着熱測定と分子間ポテンシャル検討から明らかになった,SO_2分子双極子配列転移は本研究費による支援があって初めて見出された重要事実である。0.75nmスリット空間中でSO_2分子は2次元シート様分子集団構造を形成する。充填率が0.6以下ではSO_2分子は双極子を互いに平行に配列して,分子・スリット細孔壁間相互作用を強めている。充填率が0.6以上になると,平行配置のSO_2双極子間反発が高まり、SO_2分子は双極子を互いに反平行にして配列するようになる。この現象は微分吸収熱の充填率変化カーブに明瞭に示された。つまり,充填率0.6までは,微分吸着熱はサブナノスペースの強い分子場に対応して,ほぼ一定である。ところが,充填率が0.6を超えると微分吸着熱が急増する。このように双極子配列構造がサブナノスペース中で,吸着分子数に伴い急変する現象の発見は,綿密かつ総合的実験と理論解析によるものである。
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