研究概要 |
非周期性高分子の電子状態を計算するための理論的重合法によるプロクラムを,分子軌道法のいろいろな近似のレベルで作成し,そのプログラムによってモデル化合物の計算をおこない,その計算精度や応用性の検討をおこなってきた。すなわち,いろいろな近似のレベルの分子軌道法として,理論的重合法と結合させたものを列記すると,拡張ヒュッケル法,半経験的分子軌道法として,CNDO/2法,MINDO法,MNDO法,CNDO/S法,AMI法,PM3法との結合をおこなった。特に,MNDO法,AMI法,PM3法については,世界的に広く用いられているMOPACプログラムパッケージを用いておこなったので,近い将来ソフトウェアとして,Public Domainで公開し,広く一般に使用できるようにすることが可能にできる見通しもついてきている。さらには、分子軌道法のなかで,計算時間もかゝるが,計算精度や信頼性が格段に高いことが知られているAb initio法と,理論的重合法との結合も進め,満足すべき結果を得ている。さらに,近年,結晶表面や固体の物性研究によく用いられている密度汎関数法との結合にも成功しており,理論的重合法は,あらゆる分子軌道法や密度汎関数法との結合が可能な,極めて一般的な方法であることが明らかになっており,近い将来,これらの方法を包含した体系的なプログラムパッケージにでき得ることを明らかにした。さらに,この方法を応用した系として,有限の長さの周期性高分子,その一部にソリトンなどの格子欠陥を含む高分子,生体高分子に代表される完全に非周期的なランダムポリマー,さらには結晶表面の吸着,また非周期性高分子鎖内のサイトの反応性の尺度を示す局所状態密度の計算にも応用できることを示した。さらに強調すべきことは,この理論的重合法による計算時間は,通常の方法に比して桁違いに少いことがわかった。
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