研究概要 |
α-ブロモアミノエステルがアリルスズと反応する際に,ルイス酸の使用により反応が活性化されるが,例えばZnCl_2を用いるとこれがラジカル開始剤として作用することを見い出した.キレーション効果によって立体選択性を高めるのみならず,ZnCl_2はアリルスズのラジカル開始剤となる.他の活性ハロゲン化合物(ベンジル位やアリル位にハロゲンを有するもの)でも同様にアリルスズでアリル化されるが,やはりZnCl_2を用いると反応が活性化され,塩化亜鉛がラジカル開始剤として作用することが判明した。一方,α-メトキシカ-バマートをBF_3・OEt_2などのルイス酸で処理すると,アシルイミニウムイオンが生成するのではないかと提案されていたが証明されていなかった.我々は有機合成への応用に直接結びつけられる系において,アシルイミニウムイオン中間体をはじめてNMRで直接観測することに成功した。NOE等の測定により一般にはE体のイミニウムイオンが生成することが判明した.これまで分子内にアセタールを有するα-アルコキシアリルスズ化合物がルイス酸の存在下で非常に効率よく環化することを見い出している.この環化の遷移状態を明らかにするために,α'位にメチル基を導入した基質で反応を行い,その生成物の立体構造を解析したところ、反応はシンクリナル遷移状態を経由して進行することを見い出した.四塩化チタン存在下スチロイド側鎖を有するキラルなアルデヒドに対し,S配置をもつキラルなα-メトキシ有機鉛反応剤を作用させ,高いクラムーシン選択性を得ることに成功した.またラセミ体の有機鉛反応剤を用いると効率よく速度論的分割が行われ,やはり同様に高いクラムーシン選択性が得られた.この方法論を応用し,植物生長ホルモンとして重要なブラシノリド関連化合物として,28-ノルブラシノライドを得ることに成功した.
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