研究概要 |
クロム,ジルコニウム,ニオブ,モリブデンのポルフィリン錯体について,軸配位子の脱離,交換反応の機構をNMR,ESR,可視スペクトルによって検討した.フェノール類(カテコール,ヒドロキノン,チオフェノール類を含む)を配位子とした場合の交換反応は,以下の3段階の機構で進むことを明らかにした。1.フェノールから錯体へのプロトン移動によって配位子が脱離し,配位不飽和錯体カチオンとフェノレートアニオンのイオン対が生成する.2.フェノレートアニオンから錯体カチオンへの電子移動によって配位不飽和還元錯体-フェノキシルラジカル対が生成する.3.ラジカル対の再結合によって配位結合の形成(フェノキソ錯体の生成)が完了し反応が完結する.この機構は,配位不飽和錯体の電気化学測定によって実証された.置換する配位子のアニオンが安定な場合には2の段階が進行せず,配位不飽和酸化型錯体が生成する。また,立体障害の大きな場合,あるいは配位結合の形成による安定化が充分でない場合には、3の段階が進行せず,配位不飽和還元型錯体と遊離ラジカルが生成する.錯体触媒構成の際には,配位不飽和錯体の酸化状態を制御することがもっとも重要であることが明かにされた.この観点から,ニオブ,モリブデン錯体を光化学的に還元して,配位不飽和錯体を生成させ,酸素分子の活性化を行った.ささらに光触媒反応の機構についても検討を行い,還元型配位不飽和錯体から酸素分子への電子移動,生成ラジカル対の再結合によって超酸化物錯体の生成が推定された.超酸化物錯体と基質との反応経路は,種々の基質を用いることによって,機構を明かにすることができた.
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