研究概要 |
愛媛県砥部地域の陶石鉱床を構成する石英の鉱物学的性質を詳しく調べ,次のような特徴と特性が明かになった。 1.石英は微粒の粘土鉱物類と密雑に共存して陶石を構成する。これらの粘土鉱物は熱リン酸で処理することによって溶解除去され、石英の単体分離が可能である。 2.X線回折によると,これらの石英は,ブラジル石英などの標準的な石英に比べて結晶度が低く(5重線がブロードになって分離が悪い),格子定数もa軸とb軸がともに大きくなる性質が著しい。 3.示差熱分析によるα-β転移温度測定結果では,標準的な石英が573℃のシャープな吸熱ピークを示すのに対して,砥部陶石中の石英はピークがブロードになって低温側に移動し,格子定数が大きい試料では550℃から568℃の温度範囲に2つまたは3つのピークが認められる。このことから陶石中の石英粒子の不均質な性質が示唆される。 4.これらの物理的性質は微量化学成分含有量の変動とよく対応している。微量成分としてはアルミニウム(Al_2O_3=3000-6800ppm)が最も特徴的に含まれており,量的には少ないがアルミニウムとよい相関を示すリチウム(Li_2O=40-170ppm)も含まれている。陶磁器原料としての重要な物理特性にこのような微量化学成分が関与することが判明した。 5.顕微鏡冷却加熱装置による流体包有物の均質化温度測定では,石英粒子が微粒なために充分な結果がまだ得られていない。今後,試料調整を含む測定法の改善が必要である。
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