研究概要 |
本研究は,PZT強誘電膜を,ゾル-ゲル法によって作製しさらに単結晶化する方法を検討することを主たる目的とした.単結晶化において重要な因子は,基板材料・溶液・焼成過程を適切に選択することによって達成することができる.ゾルは,Zr,Tiのアルコキシドをn-プロピルアルコールに溶解させ,さらに,酢酸鉛を,また,安定化材としてジエタノールアミンを添加して得た.基板は,MgOとシリカガラスを用いた.コーティングはディップ法・スピンコート法を用いて行ったが,厚膜化においてはスピンコート法を用いた.シリカガラスを用いた場合は,ペロブスカイト相の生成が因難であることがわかった.これは,ガラス基板中へ鉛が拡散することによって起こるためであることが明かになった.マグネシア基板の場合は,ペロブスカイト結晶粒子は,柱状晶として成長することが確認された.表面を研磨した基板を使った場合は,柱状晶は基板の方位とは無関係な方位となって成長し,へき開した基板を用いたときは,柱状晶は基板表面にエピタキシャルとなって,(100)面が優先配向した.このように活性な清浄表面を得ることにより,単結晶膜が得られることの指針が得られた.粒径効果により強誘電性を示す正方晶相は,厚膜化によって得られると考えられる.厚膜プロセスを確立するため,繰り返しコーティングにより,10μm級のクラックの無い膜の作製を行うことが可能となった.強誘電膜を実際のデバイスに応用するためには,電極との接合が必要である.そのため,安価でかつ機械的・耐食性に優れたステンレス鋼を選んだ.ステンレス鋼からの元素の拡散や酸化を防ぐための中間相としてジルコニア膜をコーティングした電極材料を開発した.ジルコニアコートステンレス鋼は,10kV/mm程度の絶縁破壊強度を持っていることが確認された.また,ステンレス鋼に直接PZT膜をコーティングしたものは,ペロブスカイト相が得られた.
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